PCT出願とは?
世界中の多くの国で特許制度が採用されています。特許は国ごとに付与されるものですので、外国で特許を取得するためには、それぞれの国で特許を取得する必要があります。
外国で特許を取得するための方法の1つとして、PCT出願(国際出願)があります。ここでは、PCT出願について、ご説明します。
1.PCT出願の概要
PCT出願とは、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)にもとづく国際出願です。PCTは、Patent Cooperation Treatyの頭文字をとったものです。特許協力条約は、工業所有権の保護に関するパリ条約において認められている特別の取極(とりきめ)にあたるものです。
指定された受理官庁に対して出願を行うことで、条約に加盟している全ての国に、同時に出願したのと同じ効果を得ることができます。
日本の特許庁も受理官庁の1つです。日本の特許庁へPCT出願をする場合、日本語又は英語の出願書類により行うことができます。
受理官庁に対して出願をした日を国際出願日といいます。この国際出願日が、各国での出願日として取り扱われます。
国際出願をした後、国内移行期限(多くの国が出願日・優先日から30か月又は31か月)までに、特許権の取得を希望する国へ移行手続きを行うことで、その国での実質的な出願手続きが行われたこととなります。移行手続きが行われた後は、その国の法令にしたがって審査等の手続きが進められます。
世界中の多くの国が特許協力条約に加盟していますので、ほとんどの国について、PCT出願を経由した出願が可能です。ただし、台湾など、特許協力条約に加盟していない一部の国や地域では、PCT出願を経由して出願をすることができませんので、注意が必要です。
2.PCT出願の手続き
PCT出願をした後、優先日から1年6か月が経過すると、国際公開が行われます。国際公開により、PCT出願された発明の内容が公開されます。優先日とは、日本で特許出願をした後、優先権を主張してPCT出願した場合、日本で特許出願をした日を言います。
PCT出願がされると、国際調査機関により国際調査が行われます。国際調査では、出願した発明に近い内容の発明が過去に出願されているか等の調査が行われます。
また、国際調査により発見された特許文献に対して、新規性を有するか、進歩性を有するか、産業上の利用可能性を有するかの見解書も作成されます。国際調査報告と国際調査見解書は、出願人にもその内容が通知されます。出願人は、国際調査報告と国際調査見解書の結果を見て、各国への移行手続きを行うか否かを判断することもできます。
なお、日本を受理官庁としてPCT出願をする場合、日本の特許庁が国際調査機関として国際調査を行います。
日本で特許出願をした後、優先権を主張してPCT出願をした場合は、日本の出願日から30か月(31か月の国・地域もあります)が経過するまでに、それぞれの国へ移行手続きを行う必要があります。
また、日本出願を基礎とせずにPCT出願をした場合は、PCT出願の国際出願日から30か月(31か月の国・地域もあります)が経過するまでに、それぞれの国へ移行手続きを行う必要があります。
国際段階から国内段階へ移行する手続きを行うためには、その国の言語による明細書の翻訳文の提出が必要となります。
例えば、米国への移行手続きを行うためには、明細書の英語の翻訳文の提出が必要ですし、中国への移行手続きを行うためには、明細書の中国語の翻訳文の提出が必要です。
3.PCT出願をするメリット
パリルートの場合であれば、日本へ出願してから1年以内に、どの国に出願をするのかを決めなければいけませんが、PCT出願の場合、日本へ特許出願してから30か月(又は31か月)が経過するまでに手続きをとればよく、時間的な余裕があります。
パリルートと比べ、PCT出願を経由して外国出願をする方が割高となりやすいですが、事業の推移を見ながら特許の取得をしたい国を決めたい場合は、PCT出願をした方がよいです。
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