特許権とは?
1.特許権とは?
特許権とは、特許を受けた発明を独占的に実施することができる権利です。特許法第68条では、「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。」と規定されています。
特許権を有する特許権者は、特許発明を実施することができるとともに、正当な権利のない第三者の実施を排除することができます。
ここで、「業として」は「事業として」を意味します。正当な権利のない第三者が、事業として特許発明を実施した場合は、特許権の侵害となります。一方で、第三者が事業としてではなく、個人的に発明を実施したとしても、特許権の侵害とはなりません。また、試験や研究を目的として発明を実施しても、特許権の侵害とはなりません。
なお、第三者が、特許に関する製品を無償で提供した場合であっても、事業として行っているのであれば、特許権の侵害となります。有償であるか、無償であるかは、関係ありません。
第三者が特許権を侵害した場合、特許権者は、相手方に、差止請求、損害賠償請求を行うことができます。差止請求では、例えば、相手方に侵害行為の停止を求めたり、侵害をしている製品の廃棄や、侵害行為に使用した設備の除却を求めることができます。
2.特許権が発生する条件と、権利期間
特許権は、発明の内容を記載した書類を特許庁に出願し、審査の結果、特許にしてもよいと認められた場合に発生します。審査又は審判の結果、特許にしてもよいと認められた場合は、特許庁から特許査定又は特許審決が届きます。これらが届いてから30日以内に特許料を納付することで、特許権が発生します。
特許権の存続期間は、特許出願の日から20年が経過するまでです。ただし、特許権を維持するためには、毎年、特許料(「年金」とも言われます)を支払う必要があります。特許料の支払いが、所定の期間までにされない場合は、特許権は消滅します。
3.財産権としての特許権
ところで、特許権は、財産権の一種です。個人が特許権者になることもできますし、法人が特許権者になることもできます。また、特許権は財産権ですので、他の個人や法人に移転することも可能です。
また、特許権者は、他者に実施権を設定することもできます。実施権が設定されると、他者も特許発明を実施することができます。実施権には、通常実施権と専用実施権があります。
通常実施権は、特に契約での定めがない限り、複数の個人、法人に設定することができます。一方、専用実施権は、特許発明を独占的に実施することができます。専用実施権は、特定の1つの個人又は法人にしか設定できないもので、専用実施権を設定すると、特許権者も発明の実施をすることができなくなります。
4.特許権を取得するメリットとデメリット
特許権を取得するメリットとしては、やはり、特許発明を独占的に実施できることだと言えるでしょう。競合他社も実施をしたいような有効な発明について特許を取得できれば、競合他社と差別化を図ることができ、優位性をもって事業ができるようになります。
また、特許権を取得していないと、類似品が多くなり、価格競争に陥りやすくなります。ですから、特許権を取得することで、価格の下落を防ぐことも可能となります。
一方で、特許権を取得するには、発明の内容を公開する必要があります。特許出願から1年6か月が経過すると、出願書類が公開されますし、特許になった際にも、その発明の内容が公開されます。その結果、他社にもその内容が知られてしまうことになります。つまり、特許権を取得しようとすると、競合他社に発明の内容が知られてしまう、というデメリットも発生します。
このように、特許権を取得することには、特許発明を独占的に実施できるというメリットがある一方で、発明の内容を他社に知られてしまうというデメリットもあります。ですから、特許権の取得を検討する際には、これらのメリットとデメリットのどちらが大きいのかを、よくよく検討する必要があります。
<関連記事>
| 特許の知識にもどる |