発明とは?
1.発明とは?
特許制度は、発明を保護する制度です。特許を取得すると、その発明を独占的に実施することができます。それでは、「発明」とは、何でしょうか。
特許法第2条第1項では、以下のように定めています。
第2条
1 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
「発明」であるといえるためには、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である必要があります。特許・実用審査基準によれば、以下の(i)から(vi)は、発明に該当しないとされています。
(i) 自然法則自体
(ii) 単なる発見であって創作でないもの
(iii) 自然法則に反するもの
(iv) 自然法則を利用していないもの
(v) 技術的思想でないもの
(vi) 発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの
2.発明に該当しないもの
(i) 自然法則自体
自然法則そのものは「発明」ではありません。自然法則とは、自然界における現象について成立する普遍的な法則をいいます。例えば、エネルギー保存の法則やオームの法則、慣性の法則などは、自然法則そのものですので、「発明」には該当しません。これらの自然法則を利用して創作したものが「発明」となります。
(ii) 単なる発見であって創作でないもの
天然物や自然現象の発見は、「発明」には該当しません。これらは「創作」ではないためです。ただし、天然物から人工的に単離した化学物質や微生物は「創作」されたものであり、発明に該当すると判断されます。
(iii) 自然法則に反するもの
エネルギー保存の法則などの自然法則に反する手段が含まれるものは、「発明」に該当しません。例えば、「永久機関」(外部からエネルギーを受け取ることなく、仕事を行い続ける装置)はエネルギー保存の法則に反しますので、請求項の一部に「永久機関」が含まれる場合は、発明とはいえません。
(iv) 自然法則を利用していないもの
請求項に係る発明が以下のいずれかの場合は、自然法則を利用したものとはいえず、「発明」に該当しません。
(ア)自然法則以外の法則(例えば、経済法則など)
(イ)人為的な取決め(ゲームのルール、スポーツのルール、プログラム言語など)
(ウ)数学上の公式
(エ)人間の精神活動
(オ)上述した(ア)~(エ)のみを利用しているもの(ビジネスを行う方法など)
例えば、「インターネットでピザの注文を受け付けて宅配をする方法」はビジネスを行う方法なので、「発明」には該当しないと判断されます。ただし、このビジネス方法を、ソフトウェアを用いて実現すれば、「発明」になります。
特許・実用新案審査基準では、「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合は、当該ソフトウェアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。」と記載されています。
例えば、
「コンピュータ装置を、
ユーザが有するユーザ端末から商品の購入情報を受信する購入情報受信手段と、
配達者が有する配達者端末から、該商品の宅配が完了したことを示す情報を受信する宅配情報受信手段と、
宅配情報を受信した情報が、購入情報を受信した時刻から30分以上が経過している場合に、ユーザに返金が必要であることを示す情報を登録する返金登録手段
として機能させる、コンピュータ装置。」
といったような請求項を記載すれば、「発明」に該当すると判断されます。
(v) 技術的思想でないもの
技術的思想でないものとしては、以下のものがあげられます。
- 技能
- 情報の単なる提示
- 単なる美的創造物
技能は、個人の熟練によって到達し得るものです。例えば、トルネード投法や一本足打法などは、この技能に該当するものです。情報の単なる提示としては、例えば、装置の操作方法についてのマニュアル、画像データがあげられます。また、単なる美的創造物としては、絵画や彫刻、写真などがあげられます。
(vi) 発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの
例えば、自然法則について誤った前提のもとに、請求項に発明として記載されたものの場合、その請求項に記載された内容では、課題を解決することができませんから、「発明」ではないと、判断がされます。
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