個人で特許出願するメリットとデメリットについて
1.特許事務所に依頼せず個人又は自社で特許出願をするメリット
特許事務所に依頼せず個人又は自社のみで特許出願をする一番のメリットは、費用を抑えることができる点です。
特許事務所に依頼をすると、特許事務所の手数料が発生します。一方、個人又は自社のみで特許出願をすると、特許事務所の手数料は発生しません。発生する費用としては、特許印紙代のみです。
特許出願を特許事務所に依頼すると、通常30~45万円程度がかかりますが、個人又は自社のみで行うと、オンライン手続きの場合は特許印紙代14000円(ただし、オンライン手続きができる状態にするために電子認証等の取得が必要で、費用が発生します)、郵送による手続きの場合は特許印紙代に電子化手数料を加え2~3万円程度です。
また、審査の結果、拒絶理由が通知されると、意見書・手続補正書を提出する必要がありますが、特許事務所に依頼すると5~15万円程度の手数料が発生します。個人又は自社のみで行う場合は、この費用も発生しません。
特許出願をしてから特許を取得するまでのトータルの費用ですと、特許事務所に依頼すると約80~100万円ですが、特許事務所に依頼しない場合は、15~20万円程度ですみます。
2.特許事務所に依頼せず個人又は自社で特許出願をするデメリット
特許出願に依頼せず個人又は自社で特許出願をした場合、費用面でのメリットはありますが、デメリットもあります。
1つ目は、時間がかかることです。
特許出願のための書類を作成するのに、経験のある弁理士でも少なくとも3~4日の時間がかかります。特許出願の書類作成の経験がなければ、それ以上の時間がかかるでしょう。1週間では難しいでしょう。特許出願の書類作成に必要な時間を、本来の業務にあてていただいた方が有効な時間の使い方ができるかもしれません。
また、これは出願書類の作成だけではなく、審査の結果、拒絶理由通知が届いたときにも同じことが言えます。
2つ目は、クオリティです。
特許出願のための書類の1つとして、「特許請求の範囲」という書類があります。特許請求の範囲は、特許を受けようとする権利範囲を記載するものです。この権利範囲の書き方1つで、権利範囲が広くなったり狭くなったり、或いは、特許が認められたり特許が認められなかったりするわけです。
専門家である弁理士ですら、上手い下手がでるほど、難しいものですので、出願書類の作成経験の少ない個人の方が、適切に「特許請求の範囲」を作成することは、きわめて困難だと思われます。
また、特許出願をした後、審査の結果、特許庁から拒絶理由通知という通知が届く場合があります。この拒絶理由通知に、どのように対応するのかで、特許が認められるか、特許が認められないかが決まります。また、特許が認められたといっても、権利範囲の広い有効な特許の場合もあれば、権利範囲の狭い有効でない特許の場合もあります。
専門家である弁理士の間でも、この拒絶理由通知への対応をする力に、大きな差があります。ご経験の少ない方が、適切な対応をすることは、出願書類を作成する以上に難しいのではないかと思われます。
3つ目は、期限管理です。
日本で特許出願をした後、外国出願をする場合、日本の出願日から1年以内に外国での出願をするか、PCT出願をする必要があります。また、日本で審査を進めるためには、日本の出願日から3年以内に、出願審査請求の手続きをとる必要があります。
特許事務所に依頼をした場合、このような手続きの期限を事務所で管理し、事前に知らせてくれます。ご自身で期限の管理をする必要は、ありません。
一方、特許事務所に依頼しない場合は、このような期限の管理を自分で行う必要が出てきます。1年後や3年後の期限を管理するのは、なかなかに難しく、気が付いたら期限が過ぎていた、ということも十分に考えられます。
3.個人で特許を出願するか、特許事務所に依頼をして特許出願をするか?
特許事務所に依頼せずに、個人で特許出願をした場合、有効な特許の取得が難しいことが、おわかりいただけたのではないかと思います。
創業期などは、資金も少なく、特許事務所へ支払う手数料を高額に感じる場合もあるかと思いますが、有効な特許を取得するために、信頼できる弁理士の方にご依頼されることをお勧めいたします。
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