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特許の知識

早期審査 特許を早期に取得するには?

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1.特許の審査にかかる期間

特許権を取得するためには、特許庁にて審査を受ける必要があります。

特許出願の日から3年以内に出願審査請求をすることで、特許庁での審査が開始されます。といっても、すぐに審査が開始されるわけではなく、審査の結果が通知されるまでに、ある程度の時間がかかります。

 

特許庁の統計によれば、審査請求をしてから、最初の審査結果の通知(特許査定又は拒絶理由通知)が届くまでの平均の期間は、2016年が9.5か月、2017年が9.3か月、2018年が9.3か月といったように、ここ数年、約9か月となっています。拒絶理由通知が届いた場合であれば、意見書や手続補正書を提出した後、再度、審査がおこなわれますから、最終的に特許が認められるまでに、少なくとも1年はかかることになります。

 

2.早期審査の申請

このように、出願審査請求をしたとしても、審査の結果がだされるまで、ある程度の時間がかかるわけですが、これを短くすることができます。その方法は、早期審査の申請をすることです。

 

早期審査の申請をすることで、審査の結果が通知されるまでの期間が2~4か月と、大幅に短縮されます。2018年の実績によれば、早期審査の申請から平均2.3か月とのことです。

ですから、出願と同時に、審査請求と早期審査の申請をすれば、早ければ、出願から3~6か月以内に特許を取得することも可能となります。

 

早期審査の申請件数は、年々増えており、特許庁の統計によると、2017年には、2万件を超える早期審査の申請がされています。2017年の日本での特許出願件数は約32万件ですので、全体の6%強の出願で早期審査の申請が行われていると言えます。

ただし、早期審査の申請が認められるためには、以下の①~⑥いずれかに該当する必要があります。

 

① 中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願

② 外国関連出願

③ 実施関連出願

④ グリーン関連出願

⑤ 震災復興支援関連出願

⑥ アジア拠点化推進法関連出願

 

より詳細を見ていきましょう。

①中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願

出願人の全部又は一部が、中小企業又は個人、大学・短期大学、公的研究機関、承認TLO又は認定TLO、若しくは試験独法関連TLOであることが必要です。中小企業は、以下の表1の従業員数の基準、又は表2の資本の額の基準を満たすことが条件となります。

 

表1 業種毎の従業員数の基準

a. 製造業、建設業、運輸業その他の業種(b~eを除く。) 300人以下
b. 小売業 50人以下
c. 卸売業又はサービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業及び旅館業を除く。)
100人以下
d. 旅館業 200人以下
e. ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及び
チューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く。)
900人以下

 

表2 業種毎の資本の額(又は出資の総額)の基準

a. 製造業、建設業、運輸業その他の業種(b及びcを除く。) 3億円以下
b. 小売業又はサービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業を除く。)
5千万円以下
c. 卸売業 1億円以下

 

②外国関連出願

出願人が、その発明について、日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へ出願していることが条件となります。PCT出願をしている場合でも、この「外国関連出願」の条件を満たします。

 

 

③実施関連出願

出願人又は出願人からその発明についてライセンスを受けた人が、その発明を実施しているか、(早期審査に関する事情説明書を提出してから)2年以内に、その発明を実施する予定があることが条件となります。

 

 

④グリーン関連出願

グリーン発明(省エネ、CO削減等の効果を有する発明)についての特許出願であることが条件となります。

⑤震災復興支援関連出願

出願人の全部又は一部が、災害救助法の適用される地域(東京都を除く)に住所又は居所を有し、地震に起因した被害を受けた者である場合、又は、

出願人が法人であり、災害救助法の適用される地域にある事業所が地震に起因した被害を受けており、その事業所の事業についての発明について出願している場合 が条件となります。

 

 

⑥アジア拠点化推進法関連出願

出願人の全部又は一部が、特定多国籍企業による研究開発事業の促進に関する特別措置法(アジア拠点化推進法)に基づいて認定された研究開発事業計画に従って研究開発事業を行うために特定多国籍企業が設立した国内関係会社であって、この研究開発事業の成果について出願している場合が条件となります。

3.早期審査に関する事情説明書の記載

早期審査の申請をするためには、出願審査請求をするとともに、①~⑥のいずれかに該当することを証明するために「早期審査に関する事情説明書」という書類を、特許庁へ提出する必要があります。

 

早期審査に関する事情説明書には、【提出日】、【事件の表示】、【提出者】などの書誌的事項のほかに、【早期審査に関する事情説明】を記載します。

【提出日】は、事情説明書を特許庁に提出する日です。

【事件の表示】の欄には、早期審査の対象となる出願の出願番号を記載します。

【提出者】の欄には、出願人の住所(又は識別番号)と、出願人の氏名・名称を記載します。

 

【早期審査に関する事情説明】には、「事情」と「先行技術の開示及び対比説明」を記載します。

「事情」としては、①中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願、②外国関連出願、③実施関連出願、④グリーン関連出願、⑤震災復興支援関連出願、⑥アジア拠点化推進法関連出願のいずれかに該当することを記載します。

例えば、「出願人である株式会社○○○○はサービス業に属する事業を営むものであって、従業員数は50人、資本金は3千万円であるから、「早期審査・早期審理ガ イドライン」に定める中小企業である。」といったように記載します。

 

「先行技術の開示及び対比説明」には、先行技術の文献名と、早期審査の対象となる発明と先行技術の対比説明を記載します。

例えば、「文献名」は、「先行技術調査を行った結果、特開2000-100000号公報を発見しました。」といったように記載します。また、「先行技術の対比説明」は、「特開2000-100000号公報には、本願発明の「○○○○」は記載されていません。本願発明は、「○○○○」を備えることにより、△△△△という優れた効果を奏することができます。」といったように記載します。

 

明細書中で、先行技術の文献名や公報番号が開示され、対比説明が記載されている場合は、「明細書中の【0010】に記載されています」といったように、簡略的に記載することも可能です。

また、日本語でPCT出願をした場合で、国際調査見解書又は国際予備審査報告書が得られているときには、これらを早期審査に関する事情説明書に添付することで、「先行技術の開示及び対比説明」の記載を省略することができます。

 

早期審査について、より詳しいことをお知りになりたい方は、「特許出願の早期審査・早期審理について」をご確認ください。

4.スーパー早期審査で、審査はさらに早くなる

実は、特許庁は、早期審査だけではなく、スーパー早期審査という制度も用意しています。早期審査の場合は、早期審査の申請から約2~4か月で最初の審査の結果が通知されますが、スーパー早期審査の場合は、申請から1か月以内で最初の審査の結果が通知されます。

 

スーパー早期審査の対象となる出願は、以下の(1)及び(2)の両方の要件を満たす特許出願です。

 

(1)「実施関連出願」かつ「外国関連出願」であること(つまり、上記の②と③を満たしていること)、

   又はベンチャー企業 による出願であって「実施関連出願」であること

(2)スーパー早期審査の申請前4週間以降になされた全ての手続がオンライン手続であること

 

多くの特許事務所では、インターネットによるオンライン手続きを導入していますので、特許事務所に依頼して出願をしている場合は、特別な事情がない限り、(2)の条件を満たすことができると考えられます。

 

スーパー早期審査を申請する場合は、早期審査に関する事情説明書に、「スーパー早期審査を希望する」ことを記載します。

スーパー早期審査を進める際に注意しないといけないことがあります。拒絶理由通知がだされてから30日以内に意見書、手続補正書等を提出しない場合は、以後、スーパー早期審査の対象ではなく、通常の早期審査として取り扱われるようです。

ですから、意見書、手続補正書等を提出した後、次に審査の結果が通知されるまでの期間が、スーパー早期審査の場合よりも遅くなる可能性がありますので、ご注意ください。

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