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特許の知識

弁理士の特許にならないは、あてにならない

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弁理士の特許にならないは、あてにならない

とあるベンチャー企業から特許出願のご依頼をいただいたときのお話です。このベンチャー企業の事業責任者の方から当事務所へご連絡をいただきました。ここでは、Aさん、としましょう。ご相談の内容は、Aさん自らが企画された新規事業についてです。

 

Aさんから発明の内容をヒアリングしたのですが、ニッチ分野ではありますが、独創的な発想で、非常に面白いビジネスモデルでした。ヒアリングの後、明細書作成に取り掛かり、無事、出願をしました。早期に権利化をしたいとのお話だったので、早期審査の申請も行いました。

 

早期審査の申請から数か月後、特許庁にて審査が行われ、拒絶理由の通知が届きます。審査を受けた9割以上の出願について、まずは拒絶理由が通知されますので、ここまでは想定の範囲内です。

 

この後、想定の範囲外のことが起こりました。

出願当初、このポイントであれば、厳しいけれども何とか特許が認められる可能性はあるだろう、と私自身が考えていた独立請求項についても、進歩性がないと、審査官は判断していました。

 

進歩性というのは、特許が認められるための要件の1つです。その分野の専門家(当業者といいます)が容易に思いつくであろう発明は、進歩性がないとして、特許は認められません。

 

対応方針を検討したうえで、Aさんに連絡をします。すると、「社長同席のもと打ち合わせをしたい」とのご連絡があり、打ち合わせを行うこととなりました。

 

打ち合わせの際に、Aさんは驚くべきことを語ります。「当初の独立請求項と違う内容で権利化をしたい。それも、より権利範囲が広い内容で。」とのこと。これは、想定外でした。

 

私の心の中は、「えっ?、本当に? 出願のときに話していたことと、全然違う。今の独立請求項でも、かなり厳しいのに。。。」というものでした。

 

おそらく、経験のある多くの弁理士が、この時の私の「相当に厳しい」、「無理筋に近い」という判断には、ご同意いただけるかと思います。

 

私も拒絶理由通知への対応を得意にしており、これまでも、「通常は、特許にするのは難しいかな」という出願も、特許にしてきたという自負があります。

 

ですが、誰が担当をしたとしても、どうしても特許にできない、というものはあります。この件に関しては、「まず特許にするのは難しいだろう」というのが、私の本音でした。

相当に厳しいこと、特許が認められる可能性は低いことを伝えましたが、Aさんは、頑として折れません。

 

Aさん「この事業を成功させるには、この内容で特許を取得することが必要です」

 

おそらく、新規事業を進めていくにあたって、Aさんの中でも考えの変化があったのだと思います。

 

こうなると、考えを切り替えて、全力をだすのが弁理士の仕事です。

お客様と意見が異なっても、お客様に大きなデメリットがない限り、お客様の要望に沿った対応をする。そして、お客様の要望に沿った対応をする際には、全力をだす、と決めています。

 

そうして、もう一度、検討をしなおし、特許庁へ提出する意見書を書きあげました。もちろん、私自身がもっているノウハウをすべてつぎ込みました。

 

結果ですが、もうわかりますよね。あっさりと特許査定がでました。

Aさんが、どうしてもこの内容で特許にしてほしい、と一歩も引かなかったから。そうでないと、普通に無理だと、あきらめていました。Aさんの諦めない気持ちがなければ、私は、特許になる可能性のあった発明をつぶしていたかもしれません。結果として特許になったのは良かったのですが、大いに反省です。

 

取得できた特許権は、この分野においては、かなり有効なものとなるでしょう。

 

結論ですが、弁理士の「特許にならない」は、あてになりません。

 

このことで、特許で事業を強くしようとお考えの企業の方にお伝えしたいのは、一見、特許にするのが難しそうなものでも、弁理士が特許にするのが難しいと判断したものでも、その発明について特許を取得することが事業の優位性につながるのであれば、簡単にあきらめずにチャレンジをしてほしい、ということです。

 

その発明がどれだけ特許性がなさそうなものでも、特許を取得できる活路があると信じて考えぬくことが大切です。一緒になって、それを考え抜いてくれる特許の専門家を探し出し、その専門家と二人三脚で、特許の取得に向けてチャレンジをしていただきたいです。

 

そうすると、本当に、特許になります。

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