特許ありきの商品開発をやってはいけない
特許ありきの商品開発をやってはいけない
以前、とあるベンチャー企業の社長さんから、ご相談がありました。
社長さんーーー
「以前からご相談していた新商品の件ですが、商品開発の方向性を変更して、よりシンプルなものにしようと考えています。よりシンプルな設計に変更すると、特許もとれなくなるでしょうか? そうなると、特許がとれなくなるかもしれないので、特許がとれるようなものにした方がよいか、悩んでいます。」
私ーーー
「たしかに、シンプルな設計に変更すると、特許を取得するのは難しくなるかもしれません。ただ、特許ありきで、商品開発をするのは、あまり好ましくないです。その商品を使用するお客様にとって便利で、買いたくなるものを設計してください。
私ーーー
「そのうえで、最終的に開発されたものをもとに、どのように出願をすれば、特許にすることができるかを検討させていただきますので。」
社長さんーーー
「なるほど、その通りですね」
社長さんには、すぐにご納得をいただけました。
皆さんは、「特許ありきで商品開発をしてはいけない、って当然のことじゃないの?」と思われるかもしれません。でも、意外と、そうでもありません。私は、これまでに何度も、上のようなアドバイスをさせていただいたことがあります。
商品の設計をシンプルなものにすると、特許が認められ得る特徴的なポイントも減ります。この社長さんのおっしゃるとおり、その商品について特許を取得するのも難しくなる可能性があります。
ただ、特許を取得することを優先して、商品開発の方向性が変わってしまうのは、本末転倒です。特許を取得するために、商品の設計を複雑なものにした結果、まったく売れない商品となってしまっては、特許を取得する意味もありません。
新商品を開発する目的は、特許を取得することではありません。よりお客様に喜んでいただける商品を開発して、収益をあげることです。その収益を維持するために、特許が必要なのです。
ですから、特許を取得することありきで、商品開発をするのではなく、特許を取得できるものであるかはとりあえず横において、よりお客さんに喜んで買っていただける商品を設計、開発する。そして、開発された商品について、どうすれば、他社に模倣されないような特許を取得できるのかを、頭をひねって考える。
これが本来、あるべき進め方ではないかと思います。
その商品を使用するお客様にとって、より便利なもの、より効果的なものを開発したのであれば、商品の設計がよりシンプルなものでも、特許が認められるポイントが含まれている可能性は十分にあります。
例えば、商品の設計をシンプルにするために、何らかの工夫が必要となるかもしれません。
特許にすることが難しそうなものでも、知恵を絞って、特許を取得するための道筋をつける。そのために我々、弁理士がいるのだと思います。
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