特許事務所に入って間もないころに学んだ大切な教え
特許事務所に入って間もないころに学んだ大切な教え
特許事務所に入って間もないころに学んだ大切な教えがあります。
大学を卒業して、化学メーカーで研究開発職につきましたが、3年で退職をしました。その次に選んだ職場が特許事務所でした。特許事務所に入って間もなくの頃は、特許事務所の所長が厳しい方だったこともあり、毎日を緊張して過ごしていました。毎日、所長へ業務の報告をしにいくのですが、それがまた緊張します。
ある日、恐る恐る、その日に取り組んだ拒絶理由通知への対応方針について、検討結果を報告すると、所長から「この案件、特許になると思うか」との質問がかえってきました。私が即答できずに、少し間をおいてから自信なさそうに、「おそらく、、、」と回答すると、所長から「自分で特許になると思えなければ、特許にならないぞ」との一言。
今から20年近く前のことですが、「なるほど!」と妙に納得したことを覚えています。
そりゃそうですよね。
私のように、頭を使って脳が疲れたと言って、KitKat、LOOK、紗々、ラミー、バッカス、アポロ、Toppo・・・を毎日のように食べていると(どんだけ、食べんねん!!)、あっという間に顔が丸くなって、体重計にのるのが怖くなってしまうことが、至極当然なのと同じように、
意見書を書いている本人が、「この発明は特許になるべきものだ」と思って意見書を書いていなければ、審査官を説得なんてできるはずはないのは、当然のこと。
こちらの特許事務所で修行をさせていただいたおかげで、特許の基礎を学ぶことができ、今の自分があるのですが、ここで学んだことの中でも、「自分で特許になると思えなければ、特許にならない」という教えは、最重要の教えであるように思います。
それからは、拒絶理由通知や拒絶査定について検討をするたびに、「自分が特許になると思える」まで検討をして、クライアントに提案することが一つの基準になりました。
ただ、案件によっては、どうあがいても、無理そうなものもあります。私がダイエットに成功して、スリムな体形を手に入れることと同じくらいに。
例えば、特許請求の範囲に記載された全ての請求項について新規性がなく、明細書に記載された技術の特徴となりそうなポイントも、引用文献の明細書に記載されているみたいなケースもあります。まさに、八方塞がり、四面楚歌です。
そのような厳しい案件でも、時間はかかるにしても、「自分が特許になると思える」主張ができるまで粘って検討したり、自分が特許になると思えるものが到底できそうになくても、審査官に一矢報いることができそうなものを捻りだす、ということを繰り返してきました。
それだけ、脳みそを使えば、チョコレートも食べたくなります。言い訳?
実はそこまで徹底して検討をすると、最初は、これは無理でしょう、と思っていたものでも、意外と特許になったりします。
そして、これを繰り返していくことで、多くの人ならあきらめてしまうような案件でも特許にすることができるようになりましたし、多くの人なら請求項を補正して、かなり狭くしないと特許にできないような案件でも、可能な限り請求項の範囲を狭めることなく特許にすることができるようになりました。
そうなのです。大変ではあるのですが、「自分が特許になると思える」まで粘って検討することは、弁理士、特許技術者としての実力を大幅に引き上げてくれます。
ところで、ここまで読んでいただいた方は、もしかすると、「自分が特許になると思える主張ができるまで検討する、って当たり前のことでは?」と思われるかもしれません。ですが、この当たり前のことを実践するのは、そんなに簡単なことではないと、思っています。
検討には相当な時間がかかりますし、検討したからといって、必ずしも適切な反論が見つかるとも限りませんので、あきらめてしまっている特許事務所も多いというのが、長年、この業界にいる私の印象です。
あるクライアントさんから言われて嬉しかったことがあります。
「他の特許事務所だと、拒絶理由通知が来ると、すぐにあきらめておしまいになる。だけど、ライトハウス国際特許事務所だと、拒絶理由通知が来ても、どうすれば特許になるか最後まで考えてくれる。」
あきらめるのは簡単です。クライアントが求めているのは、特許出願をすることではなく、他社の模倣を防ぐことができるような有効な特許を取得することです。「自分が特許になると思える」ところまで、粘り強く検討を進めることがクライアントへの貢献につながります。
繰り返しになりますが、「自分が特許になると思える」主張ができるまで検討することは、当たり前のようで、当たり前に実践するのは難しいこと。ただ、これからキャリアを積まれる弁理士や特許技術者の方には、是非、このことを意識して仕事をしていただきたいな、と思っています。
このことを意識して仕事をすることで、クライアントへより貢献ができますし、弁理士、特許技術者として一つ以上頭の出た実力を身に着けることができるはずです。大変ではありますが、チャレンジする価値のある挑戦です。
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