特許を通して貴社の事業発展をサポートします

-説得力のある文章とは?(3)-  第99号

2014.02.24 カテゴリー/ Column 

こんにちは。田村です。

冬季オリンピック、終わりましたね。
期間中は、たくさんの感動をいただきました。

私は、浅田真央選手のフリースケーティングの演技が、
すごく印象に残りました。

皆さんは、いかがでしたか。

さて、本題です。

前回は、論理の飛躍がないように、文章を書きましょう、
というお話をさせていただきました。

「AだからCである」といったように、
Aという事実からCという結論にいきなり飛ぶのではなく、

「AだからBである。よって、BだからCである。」
といったように、

Aという事実からBという事実や予想を導き出し、
Bという事実や予想からCという結論を導き出すことで、
論理の飛躍を防ぐことができます。

例えば、以下のような場合を考えてみます。

本願発明の請求項
「樹脂A、樹脂B及び架橋剤Cを含む接着剤組成物」

引用文献1
「樹脂A及び樹脂Bを含む接着剤組成物」

拒絶理由通知の内容
「引用文献1には、架橋剤Cを用いることは記載されて
 いないが、接着剤の分野において、架橋剤Cを用いる
 ことは、周知である。
 よって、引用文献1において接着剤Cを用いることは、
 当業者が容易に想到し得る事項であり、本願発明は、
 進歩性を有しない。」

このような場合に、意見書において、

「樹脂A、樹脂B及び架橋剤Cを含む組成物の接着性
 試験の結果は「10」ですが、樹脂A及び樹脂Bを
 含む組成物の接着性試験の結果は「2」であり、

 本願発明は、予想もできない優れた効果を有します。」

と主張したとします。

ですが、樹脂A及び樹脂Bに、架橋剤を添加すれば、
接着力が向上することは十分に予測できますので、

本願発明が、予想もできない効果を有すると言えるか?
というと微妙な気がします。

次のような場合は、どうでしょうか。

「樹脂A、樹脂B及び架橋剤Cを含む組成物の接着性
 試験の結果は「10」ですが、樹脂A及び樹脂Bを
 含む組成物の接着性試験の結果は「2」です。

 また、樹脂Aのみに架橋剤Cを添加した場合は、
 接着性試験の結果は「3」であり、
 樹脂Bのみに架橋剤Cを添加した場合も、同様に、
 接着性試験の結果は「3」となります。

 樹脂Aや樹脂Bに架橋剤Cを添加することで、
 接着力は向上しますが、接着力が「1」だけ
 向上するのみです。

 しかし、樹脂A及び樹脂Bの両方が存在する場合に
 架橋剤Cを添加すると、接着力は「8」も向上する
 ことになります。

 仮に、架橋剤Cを用いることで接着力が向上する
 ことは予測できたとしても、このように大幅に接着力
 が向上することは、当業者が予想できることでは
 ありません。

 よって、本願発明は、予想もできない優れた効果を
 有するものであることが分かります。」

後者は、前者と異なって、

本願発明が予想もできない効果を有すると判断できる
だけの材料がそろっており、

単に試験結果を数値で記載しただけでなく、
そこから導き出される「接着力の向上する度合い」から、
結論へと移行しています。

何かの結論や主張を述べようとする際には、
その結論や主張を支えるための根拠や理由が必要ですし、

その根拠や理由を、順を追って丁寧に説明していくことで、
論理の飛躍がない、説得力のある意見や主張となります。

———————————————————-

メールマガジン「役に立つ特許実務者マニュアル」は
著作権により保護されています。

また、本メールマガジンは、私個人の特許に対する考え方や
ノウハウをお伝えするものであり、ご紹介する内容のすべてが
絶対的に正しいとは、考えておりません。

その点について、予めご了承いただいたうえで、お読みください。

[`evernote` not found]

↑トップへ

Top