ビジネスモデル特許で事業を強くする方法とは?
1.ビジネスモデルそのものは特許にならない
今までにない新しいビジネスの方法(つまり、ビジネスモデル)を考え付いたとしても、ビジネスモデルそのものについて、特許を取得することはできません。
特許法では、発明について『自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの』と定義しています。ビジネスモデルそのものは、人為的な取り決めであり、自然法則を利用したものではないので、特許法上の発明ではない、とされています。そのため、新しいビジネスモデルを自社だけで独占することはできません。
例えば、ピザの宅配ビジネスで、注文をしてから30分以内に届けられなければ、ピザを無料にする、というビジネスモデルそのものは、特許にはなりません。ですから、ピザの宅配についてのビジネスモデルを自社だけで独占して実施することはできません。
2.ビジネスモデル特許を取得する意義はない?
それでは、ビジネスモデルそのものが独占できないのであれば、特許を取得する意義はないのでしょうか。
実は、そうではありません。
いわゆるビジネスモデル特許は、ビジネスモデルそのものを特許として保護するものではなく、ビジネスモデルを実行する際の技術的な工夫について特許を認めたものです。
ピザの宅配ビジネスで、注文をしてから30分以内に届けられなければ、ピザを無料にする、というビジネスモデルを実行する場合、少しでも優良な事業になるように、様々な工夫が行われるはずです。
例えば、以下のような工夫が考えられます。
- 短い時間でも、ピザをおいしく焼き上げるための生地・材料の工夫
- 短い時間でも、ピザをおいしく焼き上げるための窯の工夫
- 宅配の際に、ピザの形がくずれにくい包装の工夫
- より短い時間で、効率よく宅配ができるルートを検索する検索システム
これらの工夫で特許を取得することができれば、他社に対して、より優位にビジネスを進めることができます。
他社も、自社と同様に、ピザの注文をしてから30分以内に届けられなければ、ピザを無料にする、というビジネスモデルを実行することはできるでしょう。
ただし、他社は、自社で取得した特許と同じことはできません。
例えば、他社は、自社にて特許を取得した「より短い時間で、効率よく宅配ができるルートを検索する検索システム」を利用することができませんから、少ない人数で、30分以内にピザを宅配することは難しくなるかもしれません。
その結果、他社では、宅配のための人件費がより多く必要となり、利益率も低下します。利益率が低下すれば、新商品の開発に費用をかけにくくなるでしょう。結果として、自社は、他社に比べて、優位性をもって事業に取り組むことができます。
このように、ビジネスモデルそのものについて特許を取得することはできませんが、ビジネスモデル特許を取得することで、他社よりも、優位に事業に取り組むことができます。
3.ビジネスモデル特許で事業を強くするには?
上で述べたように、ビジネスモデル特許を取得することで、他社よりも、優位に事業に取り組むことができます。
ただ、ビジネスを実行する際にできる工夫は、1つだけではないはずです。日々、改善と工夫を加えることで、より効果的、より効率的に、事業を運営していくことができるはずです。
例えば、ECサイト運営大手のAmazon社は、膨大な数の発注があるにもかかわらず、多くの商品について発注の翌日までに配送を行っています。これを実現するために、倉庫内において、キヴァシステムというピッキングシステムを利用しています。このキヴァシステムは、ユーザから発注があった際に、人が移動して倉庫内の棚に収納された商品をピッキングして段ボールに詰めるのではなく、商品が収納された棚を、ピッカーと言われるピッキングを担当する人のところまで、ロボットで移動させるものです。Amazon社は、このキヴァシステムの制御方法について、改善を重ねて、相当数の特許出願をしています。
ビジネスモデルそのものを独占することはできませんから、そのビジネスモデルが有望なものであるほど、参入する企業も多くなります。そのような環境では、1つの特許だけで、競合他社よりも優位に立ち続けることは難しいでしょう。
ビジネスを実行する際のさまざまな課題を、技術的な工夫で解決し、それらの工夫について、複数の特許を取得することで、同じビジネスを実行しようとする競合他社に対して、優位性をもって事業を進めていくことが可能となります。
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