ビジネスモデル特許の明細書の書き方について解説!
1.明細書全体の概要
本ページでは、ビジネスモデル特許の明細書の書き方の概要をお伝えします。
ビジネスモデル特許であったとしても、明細書の書き方がそれほど大きく変わるわけではありません。明細書には、【発明の名称】、【技術分野】、【背景技術】、【解決しようとする課題】、【課題を解決しようとする手段】、【発明の効果】、【発明を実施するための形態】を記載する必要があります。以下に、各項目について、ご説明します。
2.発明の名称
発明の名称は、特に名称の決め方が定められているわけではありませんが、発明の内容が一見してわかるように記載します。
発明の名称を決めるために良く用いられる方法としては、請求項で特定された「物」、「方法」を発明の名称とする方法です。
例えば、「~~を機能させる販売プログラム」という請求項が記載されていれば、発明の名称を「販売プログラム」とし、「~~とを備える販売システム」と「~~とをからなる販売方法」という請求項が記載されていれば、発明の名称を「販売システム及び販売方法」とします。
3.技術分野
発明が属する技術分野を簡潔に記載します。
例えば、「本発明は、ユーザの趣味にあわせた商品をレコメンドすることができる販売システムに関する」といった具合です。発明の名称が「販売システム」であるような場合は、「本発明は、〇〇することができる販売システム」のように記載するとよいでしょう。
4.背景技術
背景技術の欄では、発明が属する技術分野における従来の技術について説明します。
従来から存在するビジネスモデルにおいて、何らかの技術的な工夫で出願をするような場合は、従来は、どのような技術がそのビジネスモデルにおいて用いられてきたかを記載するとよいでしょう。また、まったく新しいビジネスモデルに関しての発明の場合は、その分野における従来のビジネスモデルがどういうものかを記載します。
背景技術の欄には、出願しようとしている発明に比較的近いと思われる、特許文献又は非特許文献についての説明を少なくとも1つは記載しておくことが望ましいです。
記載の仕方としては、「例えば、~~~~~を解決することを目的として、~~~~~システムが開示されている(特許文献1参照)」といったように記載します。
【特許文献】の欄には、「【特許文献1】 特開○○-○○○○○○号公報」といったように、公開特許公報の公開番号を記載するのが一般的です。
【非特許文献】の欄には、「【非特許文献1】(著者名)、(論文名or書籍名)、(発行国)、(発行所)、(発行年月日)、(巻数)、(号数)、(頁数)」といったように記載します。
具体例としては、以下のような記載が考えられます。
【背景技術】
【0000】
近年、ウェブサイト上で商品を販売するECサイトにて、商品を購入する消費者が増加しており、より多くの商品の購入を消費者に促すために、売れ行きの良い商品をサイト上でレコメンドする販売システムが提供されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0000】
【特許文献1】特開○○-○○○○○○号公報
5.解決しようとする課題
【背景技術】の欄に記載された従来からの技術では、解決できていなかった課題を記載します。
例えば、「従来の方法は、単に、売れ行きのいい商品をユーザにレコメンドするだけであり、ユーザの属性にあった商品をレコメンドできるものではなかった。本発明は、ユーザの属性にあった商品をレコメンドすることができる販売システムを提供することを目的とする」といったように記載をします。
6.課題を解決しようとする手段
【解決しようとする課題】の欄に記載された課題を解決するための手段を具体的に記載します。
【課題を解決するための手段】では、【背景技術】と比べた発明の工夫と、その工夫によりどのような課題が解決可能なのかについて、記載をします。
例えば、【背景技術】の欄に、A手段とB手段とを備える販売システムについて開示された特許文献が記載されていたような場合に、A手段とB手段とC手段とを備える販売システムとすることで、課題を解決したようなときは、次のように記載します。
「このような課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明によれば、A手段とB手段とを備える販売システムにおいて、さらにC手段を備えることにより、~~~~~といった課題を解決できることを見出し、発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、A手段とB手段とC手段とを備える販売システムに関する。」
といった記載をします。
「すなわち、本発明は、・・・」の部分は、通常、請求項1と同じ内容を記載するのが一般的です。
7.発明の効果
【発明の効果】の欄には、発明の効果を記載します。
【発明が解決しようとする課題】をある特定の工夫で解決した結果、【発明の効果】が得られますので、「本発明によりその課題を解決することができる」という内容となります。
例えば、【発明が解決しようとする課題】が、「本発明は、ユーザの属性にあった商品をレコメンドすることができる販売システムを提供することを目的とする」である場合、【発明の効果】は、「本発明によれば、ユーザの属性にあった商品をレコメンドすることができる販売システムを提供することができる」となります。
良い明細書は、【背景技術】→【解決しようとする課題】→【課題を解決するための手段】→【発明の効果】を読めば、特許を取得しようとしている発明と、【背景技術】の欄に記載された特許文献に記載された先行技術との相違点が分かるように記載されており、また、その相違点の結果、優れた効果が得られることが、分かるように記載されています。
8.発明を実施するための形態
【発明を実施するための形態】の欄では、請求項の各要素についての説明をします。
例えば、請求項中に「携帯端末」が存在するのであれば、「携帯端末は、ユーザが携帯でき、通信により他のコンピュータ装置とデータの送受信ができるものであれば特に限定されず、例えば、タブレット、スマートフォーン、携帯電話などがあげられる。」といったように、「携帯端末」の定義や具体例を記載します。
取得しようとしているビジネスモデル特許が、コンピュータ関連のものであれば、コンピュータにてどのような処理が行われているかを示すフローチャートが、図面として必要となります。【発明を実施するための形態】では、このフローチャートについて、説明をしていきます。
【0000】
ユーザによる携帯端末へのデータ入力を受け付け(ステップS1)、携帯端末から受け付けたデータをサーバ装置へ送信する(ステップS2)。サーバ装置では、・・・・
また、ユーザが使用するコンピュータ装置の表示画面などの具体例も、図面として必要となります。【発明を実施するための形態】では、この表示画面の具体例についても、文章で説明をしていきます。
ところで、請求項ごとに発明の効果が明細書に記載されていることも、重要なポイントとなります。
特許庁の審査基準『第Ⅲ部第2章第2節 進歩性』の10頁には、「審査官は、意見書等で主張、立証がなされた効果が明細書に記載されておらず、かつ、明細書又は図面の記載から当業者が推論できない場合は、その効果を参酌すべきでない。」と記載されています。
ですから、明細書に記載されていない発明の効果について、意見書で主張しても認められない可能性があります。必ずしも請求項1で権利化ができるとは限りませんから、請求項2以降でも進歩性を主張できるように、請求項ごとに発明の効果を記載しておきます。
その他、同じ意味を指す用語が、明細書内に2つ以上存在すると、内容が分かりにくくなり、記載内容について誤解してしまう原因となります。明細書内では、用語は統一して記載してください。
造語など、範囲があいまいな用語を請求項で用いた場合は、その範囲や意味が明確になるように、その用語の定義を明細書内に記載します。
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